2.現状把握とナビゲーション

昔、母さんがこう言っていた。

「あんたなんか、県(大会)に出たら相手の補欠選手にボール取られちゃうんだから!!」

小学校6年生の時に所属していたサッカークラブで背番号10を付け、地域の選抜チームに選ばれた。その県大会の手前でCobAの母が言い放った一言だ。

当時、周りに自慢ばかりしていた俺だったが、結局、県大会の出場はベンチで観戦する事になった。

それからというもの、俺は母に同じ様に罵られる度に、練習に力が入るようになっていった。

 

 

ブレーキ

前回、「1.やるならどうなりたい?」で述べたように、”こんな風になりたい!”の発掘が夢を叶える第一歩だとお話しました。

“こんな風”はとにかく沢山ある事が大切です。やり始めることに関連していようと関連していなかろうといいのです。

そして、成長に伴い書き換えが重要な事にも触れました。

とにかく、ガソリン切れでは車は動きません。車が動けばガソリンは減って行きます。ガソリン補給してあげましょう。

もっとも、当の本人たちはガソリンが減っていることも分かりませんし、ガソリンを誰かが満タンにしてくれている事にも気づいていません。

だから、毎日を全速力で駆け抜けようとします。

目の前にある小さな小石にも気付かずにつまづき、全力で転んでヒザを擦りむく。

強く打ち付けた患部は腫れ上がり、次第に赤い血で染まっていきます。

その頃に、やっと痛みが前身に行き渡り大声で泣き出します。

初めて痛みを知った時、ブレーキの重要性を知るのです。

 

マインドブロック

ブレーキを知った時から、急に拒絶を起こし始めます。

「走りたいけど走れない。」

ダンスで言えばこんな事が挙げられるのではないでしょうか?

・友達に見せたら笑われた。
・後に始めた仲間が自分より先にステップができるようになった。
・覚えた振付を「もっとちゃんと覚えて!」と抽象的に注意された。
・一番見て欲しい人が無関心だった。

 

これらはマインドブロックの初期現象です。マインドブロックはどんな人にも存在し、人が安心して生活していく為の安全装置だったりもします。が、このマインドブロックが溜まりに溜まり過ぎると、人はどんなカンタンな行動もその一歩を踏め出せなくなります。

もちろん最終的には、本人がそれぞれのマインドブロックを設定していくのですが、子供だろうと大人だろうとそのマインドブロックを解く鍵はなかなか持ち合わせていません。

自分では、マインドブロックがかかっていることを認識しづらいからです。

そのマインドブロックを掛けたり、解いたりするのがインストラクターの仕事の一つでもあります。

 

ナビゲーション

スノーボードの初級レッスンに参加した事があります。

スノーボード初経験の俺の頭の中は、「今日の午後には、ゆっくりでも山頂から降りてこられるかな〜。。。」なんて、”こんな風”を描いていました。

しかし、始まったのは板にも触れずにフカフカの雪の中にお尻から倒れる練習ばかり。。。

やっと板を履いたと思っても、板を履いたままおんなじ事の繰り返し。

そんな事をしてる間にあっという間に午後になり、出来たのは10m程自分の足で斜面を登り、担いだ板を座ってはめ、”雪ならし”の様に真っ直ぐヘッピリ腰で降りてくる程度でした。

消化不良だった俺は、レッスン終了後、次の日の為に自己練習をしようと斜面を登っている時でした。

 

「ズザザザザー!!!!!!!!」

 

少し遠くで雪が舞っていました。

少し経ってから近くをスノーモービルが駆け上がっていき、事故者を乗せて去っていきました。

次の日の午後、リフトで山腹まで登った俺は、インストラクターの言う事を聞き逃さないように聞き、見事に下山に成功しました。

 

 

ダンサースターターに必要なのは成功体験です。

“できた!”

の感覚が、心の底から湧き出るそれを”成功体験”と言います。

よくキッズダンサーに「できた人〜」と聞くと「は〜い!」とほぼ全員が手を挙げますが、それとは違い本人もびっくりする程の体験が必要なのです。

もっと噛み砕いて言うと、「できない事。」の認識がその手前で必要になってくると言う事です。

人は、「できない事」ができるようになった時に初めて「できる」を実感します。

スノーボードのくだりで、CobAが”できない事”、あるいは”恐怖”を認識したのは、山腹に行った時ではなく、偶然の事故を目の当たりにした時でした。

しかし、キッズダンサーにおいて”できない事”や”恐怖”の認識は、”拒絶”に直結し始める前からあきらめる選択を余儀なくされるケースも少なくありません。

逆を言えば、既にダンスを始めている家庭は”ダンスを始める事に成功している”と言えるのではないでしょうか?

[人が諦めるまでの平均回数]を研究した事業家によると、

「0.8回」

が平均的だというデータがあります。

普通の人は、何も始められないまま今日を過ごしていってしまうのです。

何かを始めると言う事自体に大きなハードルが設定されているのです。

だから、始める前のナビゲーションガイダンスが必要だと言えるのだと感じます。

 

現在地の入力~現状把握~

「目的地を設定しました。所要時間は○時間○分です。料金は○円です。途中、○○から〇〇まで渋滞しています。迂回路を設定しますか?」

今や当たり前になった車のナビゲーションシステム。

ナビが無かった時を想像する事もできないぐらい浸透していますね。

CobA自身初めてローンを組んだのは、たった20万円のナビを買った時でした。

そのくらいしても必需品なナビゲーション。

あなたの人生には、優秀なナビゲーションシステムが設置されていますか?

あなたのやりたい事には、経験豊富なインストラクターは存在していますか?

特に4歳、5歳辺りの脳や身体の成長・発達は個人差が激しい時期でもあります。

それぞれのキッズダンサーにあったナビゲーションやガイダンスは、実はそのスポンサー(保護者)に委ねられているといっても過言ではないのかもしれません。

せっかく始められたダンス。

プロである先生の知識と技術はお墨付き。

あとはそのナビゲーションを個人レベルでどう設定していくのか?

車のナビを想像すれば、もうお分かりですね。

目的地を設定しただけでは、ナビは作動しません。

冒頭のCobA母のように(少し手荒な例ですが…)、現状を把握する事が行動よりも優先事項になってくるでしょう。

現在地の入力を怠れば、

・どう行くのか?

・何時間かかるのか?

・渋滞は発生しているのか?

・いくらかかるのか?

・目的地にたどり着けるのか?

 

すら、明確にならない事でしょう。

現状を把握する事が、最も分かりづらく、最も近道な方法です。

「ウチの子は何が出来ていないんでしょう?」

を先生にはっきりと聞き、ダンサーと問題を共有しましょう。

それが少しでも出来た時には、

「出来た!!!!」

一緒に喜び合える親子が、ダンスを超えて得るものが大きいものだと信じています。

 

4歳〜小学校低学年

赤ちゃんを卒業し、言葉でのコミュニケーションも増えてきたこの時。

子供が感じているのは、ご両親の背中だったりもします。

20代中盤のご両親も多いこの世代。

まだまだ分からない事も沢山ある中での子育ては、不安と希望の中で”毎日が出勤日”のような日々だと感じています。

スポンサーコミュニティーの拡充。

 

中学校から始まる上下関係では、これから起こりうる沢山の障害の乗り切り方を先輩から教えてもらっていたのを覚えています。

「三人寄れば文殊の知恵」

 

分からないから解決できないのです。分かったら解決できるのです。

個人の力が複数集まれば、それは感じた事のない程の力になってきます。

新しい場所に飛び出す勇気と柔軟性は、子供よりも保護者の皆さんに必要な事なのかもしれません。

芸能界でも、新米マネージャーの最初の仕事は、クライアントを見つけてくる事でも、次の新曲の打ち合わせでも、テレビ局でのマネジメント業務でもありません。

まずは、同業者との人脈構築から始めるのです。

新米ダンサースポンサー同士、

・初めてのステージへの緊張感

・振付の覚え方

・先生との接し方

 

など、不安要素は少しだけ経験をしている先輩スポンサーから聞いてみましょう。

毎日を全力で駆け抜けているダンサー達には到底出来ない事は、両親の最大のサポートだと思いませんか?

まだまだ子供の力が及ばない所、経済力と行動力。

まるで、アーティストが作品に集中する為に尽力する”マネージャー”のように、芸能人がその能力を最大限に開花されるよう手伝う”事務所”のように。

私たちは、ダンサーのご両親の事を”スポンサー”とお呼びしています。

StartUP!!studio KIDS HIPHOPクラスでは、”ダンスは遊び”がよく理解でき、ダンスが好きになる事をコンセプトにしているクラスです。

 

目的と、現在地が把握できたら、それを繋ぐ一本の線が浮かび上がります。

次回、「3.ダンスを踊る。その前に…」にて詳しくお話しします!

 

執筆:CobA/StartUP!!studioオーナー、プロデューサー、ダンサー、インストラクター

経歴:延べ200名を超えるキッズダンサーを指導し、数百件の実例を経験。プロデュース業としての指導を実践し、

"自ら踊り、自ら学ぶ"

ストリートダンス本来の姿をキッズダンサーとそのスポンサーに示し続けている。

ダンスビジョンは「ダンス王国」

ダンサーコンセプトは「踊り続ける」

指導歴、16年目。