昔、母さんがこう言っていた。
「あんたは世界を変えられるんだから、先ずは自分を変えなさい。」
事業の考え方について親父と口論の末、取っ組み合いのケンカをした。
「二度と帰らない。」と決め、車に乗ったCobAを慌てて追いかけてきた母は、開けようとしないウィンドウ越しにそう言った。
「俺は世界を変える!」
そう生きてきたし、そう踊ってきた。
「お前は身の丈を分かっていない!!」
の親父の反撃に遭い、一瞬心の奥底を突かれた気がした。
10年前のCobAには、そう考えるしか自分を肯定する方法が見当たらなかった。
更に、母のこの一言。
優しいようで、親父よりトゲのある一言だった。
…
1900年初頭
ストリートダンスなんて言葉もない時代。目下JAZZの黄金期。
お金も無く、地位も無い。ましてや、人権もあるのか無いのか分からないような人達が、その後この世界の音楽文化を変えてしまった。
決して表舞台に立つわけでは無いが、彼らはその音楽を自らの身体を使って四方八方にさらけ出していた。
不満があれば、歌詞に乗せた。
現実逃避するぐらい軽快なリズムとメロディー。
男女入り乱れて踊り出すフロアは、なんの壁も無くなっていたようだ。
まるで、遠い祖先がそうだったように。
1900年中期
ラジオの普及によって、音楽のスピードは何倍にも増していた。が、表に出るのはまだまだ彼らではなかった。
かのJB(ジェームス・ブラウン)でさえ、2枚目のレコードまでのジャケットには顔が載らなかった。
多くのスーパースターは、彼ら以外の人達だった。だけど、少しずつ彼ら以外の人達も、その音楽性に惹かれていった。
1900年後期
まるで、オセロのように裏返り、彼らの音楽は世界を包み込もうとしていた。
日本の音楽人達もこぞって、その音楽を取り入れようとした。
しかし、ルーツも環境も違う日本人にはそれを理解する感覚が分からなかった。
彼らのオリジナルで彼らだけしか作り出せないセンスが確かにその中にはあった。
2000年に突入
“当たり前の音楽”
それが、彼らが勝ち取った市民権。
彼らの誇りがその音楽。
それを理解した異人種しかフューチャーできない音楽。
表に出る数よりも、遥かに裏で愛されている数が多い音楽。
それを、”ブラックミュージック”と呼ぶ。
ストリートダンスは音楽の一部?
そうなんです!
ストリートダンスは音楽としての立ち位置を100年も前から保っているのです。
JAZZの時代には、ダンス、歌、演者、奏者、プロモーターなどを全てこなすパフォーマーが多く存在していました。
現代では、技術の高度化や職業の多様化に伴い、ダンサー、ミュージシャン、演出家などに振り分けられています。
もっとも、各カテゴリーでの競争力強化によって技術革新が促されますから、消費者のお客さんはいつも満足していることになるのは幸せな限りです。
しかし、本来の形は全てが一緒になってブラックミュージッシャンと言えるのだと感じます。
ただし、全てがプロ級では無くてもいいのだと思います。
人生、一つの事を極めるのに10年、いや30年かかるとも言われています。
そんな短い人生の中で、たった一つの極められる事に出会えたのは、幸せとしか思えません。
ダンスやその他の事。それを”好き”という感情で出会えた事自体が、奇跡なのです。
好きな事柄に出会えた時、それは現段階であなたの中での使命になっているはずです。
直接的な使命では無くても、その時好きだと思えるものをやれる事はのちの使命に十分なり得るのです。
最期が来た時に。
人生100年時代。
おそらく、今ストリートダンスを楽しんでいる人のほとんどは、意識があろうとなかろうと100年間の生を噛み締めていく事になりそうです。
アニメ「サザエさん」に登場する波平さんは54歳の明治生まれです。
設定は1950年代の平凡な一般家庭なので、今から70年近く前のお話になります。
当時の定年は58歳。波平さんは、4年後に定年を控えラストキャリアを模索している心中にあると推測します。
しかしながら、当時の男性の平均寿命は、58歳。
戦後の余波があったとしても、今から考えればあまりにも早く仕事を退職した後のキャリアなど考える余地も無さそうな現実です。
だから、毎晩仕事の後は腹巻姿で、晩酌を楽しむのが一般的だったのかもしれません。
時代は2020年。
平均寿命は女性は93.55歳。男性は87.12歳と、波平さんから見るとおとぎ話のような時代となっています。
その反面、定年制度が事実上破綻し、いつまでも働き続けるしかない未来が予測されているのも確かです。
そんな時、心の拠り所は毎日の晩酌だけで済むと思いますか?
どんな生き方をしていても、生物である以上最期は必ず訪れます。
きっと、その数歩手前で制限のある生活を余儀なくされる可能性は、誰にでも必ずあるのです。
仕事は人生の〇〇
その1/4を占める”仕事”とは果たして人生の何なのでしょうか?
人生を時間として捉えた時、仕事の時間は20年~30年弱は仕事をしている時間に値します。
人生100年の内の20年。
その裏側の80年は、仕事以外の時間です。
まるで、人生仕事だけで終わってしまうような発言をする方もいるのを耳にしますが、私の感覚では明らかにそれ以外の時間の方が段違いに多いような気がします。
もちろんこの80年間は、好きな事だけに使うことはできませんし、誰かに拘束されっぱなしの80年でもありません。
時間はどう使い、どう生きるか?が重要だと捉えています。
最近、子供のレッスンでよく話していることがあります。
「1日1回だけ練習」
たったの5分間。24時間の中でダンスに捻出する事に成功したら、大人になるまでに半月間の海外ダンス留学に行く事よりも価値がある。
もちろん、海外の環境に身を置くことで確実にコンフォートゾーンを変えていく事はそれでしか可能にはなりません。
あくまで、時間についての話と、習慣性の向上を目的とした話です。
しかし、海外留学をしてダンスを辞めてしまった素晴らしいダンサーを何人も知っています。
継続は、安定した習慣の上にだけ成り立つのです。
習慣とは、効率化です。
習慣化された事は、意気込まずに難なくこなしていくことが可能になっている証拠です。
それには、目標値の設定が必要です。目標なく習慣化してしまった場合、ただのルーティーンになってしまっていることが多いようです。
何かの時間の間に”難なく”こなせてしまう何かを持っている事は、継続していくカギとなります。
それが”好きな事”だったら、継続は努力というより、継続は生きる事です。
ダンスの使命
100年の歳月をかけて、黒人音楽史から発信され、自らの立場まで変えてしまったブラックミュージック。
その中に内包されているストリートダンスは、その力を存分に秘めて今も踊られているのです。
先人が作ってきた道の上に立たせてもらっている私達は、その100倍のスピードでその結果を味わうことができます。
音を立てて開いた扉のように、ストリートダンスに触れ、心揺れた瞬間から今まで開きもしなかった新しい世界に、あなた自身が踏み出すのです。
“変われる”
アイソレーション、リズム、ボディコントロール・・・
自分自身のカラダを使って自由自在に音楽をコントロールしていく。
最初っから上手くいくことなんてありません。
それ相応の努力が必要なのです。
しかし、その努力に応じて必ず変化をしていくのは、カラダだけではなくココロの変化も同じ尺度で変わっていきます。
むしろ、素直になった分だけ動きは変わります。
動きが変われば、見え方が変わります。
見え方が変われば、志向が変わります。
志向が変われば、出会いが変わります。
出会いの数だけ、情報はやってきます。
情報は、チャンスであり知識です。
知識は、夢の数に比例するのです。
夢多き者は、努力多き者です。
そんな生き方を、ナチュラルに実践している人。
それが、”ダンサー”なのです。
1人で活動し、10年ほど経ったダンサーはほとんどの人が同じような感覚を持ち始めます。
“変わった”
それをステージ上で、観客に表現し問いかけるのがダンサーの使命であり、まだそれを知らないダンサーに問いかけ導いていくのがインストラクターの使命だと感じます。
そんな事を感じながら、20年目に達した時に、どう思っているかはわかりません。
私自身、まだその道の途中で、16年経った今も成長し変化を続けているのです。
私達は、そんな指導が可能なインストラクターを輩出していくことに力を抜くことはありません。
なぜなら、それが生徒やスポンサーの皆さんの笑顔になる事を知っているからです。
ダンスの使命とは、どんな時でもダンスを通じて喜んでもらおうとする姿勢のことを言うのかもしれませんね。
まだまだ子供の力が及ばない所、経済力と行動力。
まるで、アーティストが作品に集中する為に尽力する”マネージャー”のように、芸能人がその能力を最大限に開花されるよう手伝う”事務所”のように。
私たちは、ダンサーのご両親の事を”スポンサー”とお呼びしています。
ストリートダンスインストラクター養成講座では、CobAと同じ考えを持った経験値高きダンサーがその全ての知識を参加者の皆さんに託します。
このカルチャーを次の世代に引き継ぎ、さらに高めてもらう為に、ストリートダンスインストラクターを全国で100名輩出する講座に育て上げます。
次回は、遂に具体的な行動について公開します!
「先生が素敵なのも分かったし、踊る前のココロの準備が必要なのも分かった!」
「とにかく練習だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」・・・・・・・・
と、なりがちですよね。
実は、ダンスの練習にも一般とは異なった方法が必要なのです。
ダンスが上手くなりたいならこう考える!!!
次回、「8.ダンスは逆算!?」にて詳しくお話しします!
執筆:CobA/StartUP!!studioオーナー、プロデューサー、ダンサー、インストラクター
経歴:延べ18,000人を超えるキッズダンサーを指導し、数百件の実例を経験。プロデュース業としての指導を実践し、 “自ら踊り、自ら学ぶ” ストリートダンス本来の姿をキッズダンサーとそのスポンサーに示し続けている。 ダンスビジョンは「ダンス王国」 ダンサーコンセプトは「踊り続ける」 指導歴、16年目。